真宗大谷派　真楽寺　　　勸山　弘　（第33回卒）

　十月に入ると秋も酣（たけなわ）、大気が澄んで月光が青白く感じられる。白秋とはよく言ったもの。古人は四季にそれぞれ色を配している。青春、朱夏、白秋、玄冬。素晴しい表現である。更にその四季にふさわしい風物があり、味覚があって退屈しない。気がついた時には頭髪に白いものが混っている。人間いつの間にか音もなく齢を重ねていく。
　今年の夏、母校の沼津中学、現沼津東高校の同窓会に久々で出席した。何と430余名の参加者で盛大なものであった。しかし私より先輩の出席者は矢田凡久氏ただ一人。氏は昭和8年中学卒でいまなお矍鑠（かくしゃく）、健筆ますます冴える教養人である。立派だと思う。
　齢を重ねてからの同窓会や同級会は、参加することに意義がある。現に幸せに過している人だけが集ってくる。故障のある人は来れない。やれ足腰が悪い、目下入院中、透析をやっている、ボケで施設へ入っている等々。人間80代にもなれば、自分なりに幸せをつかんだ人が勝ち。夫婦揃っていれば尚いい。社会的ポストや金は大したものではない。
　昔から言われる「箱根山　駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋（わらじ）をつくる人」　絹布（けんぷ）をまといおカゴに乗っても、悩みを抱えている人もいれば、夫婦で夜ナベに草鞋を作りながらも、ささやかな幸せを感じている人もいる。いつの時代も、幸、不幸は自分の胸三寸が決める。世間は十人十色だ。

（以下　略）