家を建てることに何を求めるかは、人によって様々であると思いますが、私は何よりも家族の安全を 保つことができる家を建てたいと思いました。
 それぞれの活動の拠点であり、外での戦いの傷を癒す 隠れ家としての家が不安全なものでは、新たな活力は生まれず、家族への思いやりの心を育てるゆとりも 生じません。

 地質調査に基づいた強固な基礎と、2階建てではあまり例がないといわれた重量鉄骨による施工を、小野建設さんにお願いしました。階段は建築基準法を大幅にクリアする勾配と幅を確保し、将来の エレベーターの設置に備えた鉄骨枠を壁の中に隠しています。電気屋のはしくれとして、当然ながら 全電化設備を取り入れたことで、火災の危険性を排除するとともに、電気床暖房とIHクッキングヒーターは、 家内からその安全性と使いやすさに大いに感謝されました。

 阪神の地震によって内部からの電気出火で多くの人が家財を失い、また取り残された人々が焼死したことは まだご記憶にあるでしょうか。今度取り付けた分電盤は震度6でまずコンセント回路を選択して遮断し、電気器具の発熱による出火を防ぎます。次に5分の避難 時間を確保してから、全回路を停止する機能を もっています。建物が損傷をうけると、内部で電気配線が短絡して出火することもあるからです。平成9年頃に開発されたものです。

 このように、発注者が多くのことにこだわりましたから、設計者と工事者にはずいぶんとご苦労を おかけしたと思います。一年間に及ぶ設計協議に辛抱強くつき合って下さった設計事務所の松下先生、それに難しい注文にも真剣に取り組んで下さった小野建設 の飯田監督には心から頭が下がります。
 出来上がった家に120パーセント満足している客がここにいることをお伝えして、お礼に替えたいと思います。


 笹原新田の児童部の構内に、とても瀟洒な建物が生まれました。10数年来の願いが皆さまのお力添えで 実現した瞬間です。

 静岡恵明学園児童部は、幼児から高校生までの52名の子どもたちが職員と寝食を共にして暮らしています。 昭和57年に建てていただいた子供たちの家は、5つのコテージとセンター棟によって構成されています。
  このたび完成した職員宿舎はセンター棟の北側の林中にあって、子供たちと職員との暮らしのクッションの 役目を持つ空間になるでしょう。 そこからまた新たな思いで子供たちとの関わりが生まれ、人が育ち合う場としての恵明学園の新たな拠点が出来ましたことを嬉しく思います。

 設計管理をして下さった有限会社橋計画工房、施工を引き受けて下さった小野建設株式会社、工事に 関わって下さった皆様に心から感謝申し上げます。